2015年4月29日、第16回 情報デザインフォーラムに参加してきた。今回の全体テーマ設定は「『つくる』を『つくる』」。つくるということについて、情報デザインの視点で考え直す機会となった。
情報デザインフォーラムは「コミュニケーションデザイン研究会」「サービスデザイン研究会」「Web UX 研究会」の3つの分科会で構成されているとのことだが、今回は坂田さん、馬田さんというサービスデザインの最先端にいるお2人が登壇することもあって、サービスデザインを背景に持つ参加者の方が多かったようだ。
「つくる」を取り巻く「つくる」
「サービス開発を取り巻く様々な『つくる』を考える」というテーマでパネルディスカッションが行われた。その中で何よりおもしろいと思ったのは、ものを作るためのサイクルと学習のためのコミュニケーションサイクルは似ているということ。どちらも、リニアではなく階段、階段よりは螺旋構造である方が好ましい。もちろん、すべてのシステムに通じることなのかもしれないけど。
では、そのすべてのシステムに通じる螺旋構造を実現するために何が大事かというと、メタな視点があるかどうかなんだと思う。メタな視点を持つこと/メタな視点で考えることについては、私自身の大きなテーマでもあるので、フォーラムが終わった後もいろいろと思いが湧き上がってきて、今に至るまで脳内が楽しいまま弾んでいる感じがある。
「つくる」を「つくる」ためにはメタ視点が必要
手元のものを作ることだけを考えることと、そのための枠組みを俯瞰して考えることは違うことだ。情報デザインは概念を可視化したり構造化したりすることが求められる分野だが、私個人の考えでは、情報デザインという文脈には何よりもメタ視点が重要なのではないかと感じている。
場面ごとに切り取った意味の具体化や可視化、構造化が情報デザインの入り口。そして、物事の輪郭を捉えやすくする過程で、そこからはみ出していくものやとがっているものを見抜いていくこと。構造化を突き詰めていく過程で、なぜ構造化されているのか/構造化しなければならないのかを問うこと。その結果とプロセスの双方に対して再帰的に形を与えていくものが、情報デザインの本質なのではないだろうか。
私は再帰的であるということが螺旋構造を支える大きな要素であるはずだ、と考えている。だから、大前提として共有・参照されるための「形」が与えられていることがとても重要。参照可能な情報をどう生み出すか・どうあぶり出すかを考える行為が情報デザインなのだと思う。だから「具体化」も「可視化」も手段のひとつでしかなくて、概念と手段の入れ子(あるいはレイヤー)を捉えるためのメタ視点のひとつとして、情報デザインがあるのだろうと思う。
言い方を変えると、情報デザインはそれ自体がありとあらゆる分野で必要とされるメタな存在である。...ということなのではないかなぁ?
作ったり使ったりの関係性変化を変数として捉える
フォーラムでは、情報デザインフォーラムのメンバーである千葉工大・山崎さん、はこだて未来大・原田さん、東京都市大・小池さん、TUBE GRAPHICS・木村さん、楽天・脇阪さん、HCD-Net・浅野さんのライトニングトークもおこなわれた。今回のLTは、かなりぜいたくな時間だったと思う。
その中でも、特に原田先生の話に強く共感した。「つくるをつくる × 持続性/つくり続けるをつくる/つくるをつくり続ける/つくり続けるをつくり続ける」というキーワードがまさに螺旋構造をあらわす言葉だと思ったし、作ったり使ったりの変化を変数として捉えるという話もとてもしっくり来る。
作ったり使ったりの関係性変化を変数として捉えるという考え方は、私がワークショプデザイナーとしてワークショップを設計する時の考え方に近いものだと思った。同じものかどうかはまだ自分の中でまとまりきっていないので、原田先生が言語化された「変数」というものを、自分自身の体験を通しつつ、今後もうちょっと踏み込んで考えていきたいと思っている。
また、その変数によって構成されていくものをどのように観察すべきか、というのも目下の興味である。変数自体を捉えることも大事だけれど、変数によって生じた活動の成果を誰が観測して誰が判断・評価するのか。定量的におこなわれるものではないとしても、それを俯瞰的に観測する視点が必要なのではないか? そのあたりの答えをレコーディングだけに求めていいのか? そもそも判断や評価は必要なんだっけ? などなど、考えたいことがたくさんできた!
モデレータという経験をさせていただいた
実は今回、パネルディスカッションのモデレータという役をいただいていた。おもしろいテーマ設定の中、はじめてモデレータという立場でのセッションを経験させていただいたことは、貴重な経験となった。
モデレータとしては力不足で至らない点がたくさんあったが、自分なりに得た感想や知見は別エントリで改めてまとめる予定。
※後日追記
2015年5月6日、別エントリとして「パネルディスカッション、あるいは公開ダイアローグ」を公開しました。