ここのところ制作していた薄い本がようやく仕上がった。1年かけて故郷に足を運んで、いろいろなことを思い返して、見つめ直して、やっと形になった本「いいざか帖」。
「いいざか帖」は、わたしのマチオモイ帖という企画展のために作成したミニブック。2011年から続いているこの企画展にぜひ参加してみたいと思って、2014年の3月から準備をはじめて、今年の参加に間に合った。
マチオモイ帖のコンセプトは、以下のとおり。
自分のオモイのある大切な町を、自分だけの視点で表現することを通して、今まで何もないと思っていた町に眠る無数の価値や、人とのつながりがみえてきます。
「マチオモイ帖」とは「町」を想う「帳面」。日本各地のクリエイターが、大切なふるさとの町、学生時代を過ごした町や今暮らす町など、それぞれのオモイが詰まった町を、自分だけの目線で切り取り、手の中に入るぐらいの冊子や映像にして、展覧会などで届けるプロジェクトです。
私が作った「いいざか帖」は、何かの紹介をするようなスタイルではないし、あまり色気のある展開でもない。紙面にもそんなにメリハリはつけていなくて、子どもの頃の記憶や視点を織り交ぜながら、とにかく淡々と進む本である。
本業も大変に忙しい時期で思うように時間が取れず、じゅうぶんな推敲も校正もできていなくて、実は一発本番書きおろしみたいな文章を載せている。印刷後に脱字も見つけてしまった。が、そこは勢いということで納得することにしている。
構成やレイアウトについてはもっと心残りが多くて、賑やかに図版を載せたりもしたかったなとか、もっと楽しげにしてもよかったななどと思うのだけれど、この淡々とした感じが自分の持ち味なのだと言ってしまえば、それもいいかなと思えなくもない。
ただ、途中まで中綴じ本として作るつもりで進めていたものを、直前で無線綴じに変更せざるを得なかったという経緯があり、レイアウトのバランスが調整しきれないままタイムリミットを迎えてしまった。プロトタイプを経る時間もないまま製本しなくちゃならなかったのは一番切ない...。あと奥付のレイアウト調整失敗してて、明らかに余白が変になっている。まぁ、でも刷っちゃったしな。
そんなこんなで、いろいろな意味でブラッシュアップが追いつかず、自分が求めるクオリティに到達していない状態ではあるのだけれども、それも今の自分の実力であるし、何より作りきったという事実をもっと認めてあげてもいいだろうと考えるようにしている。
何より、作りきることに意味がある局面って、あると思う。
なぜ自分がこの本を作ろうと思ったのか、この本を作った先に何をしていこうと願ったのか。あらためてそれを思い起こせば、あきらめずにこの一冊を作ることができた自分を素直に褒められる。
電子書籍化しとこうかな、とも考えているので、その際は読んでいただけたらうれしいな。