2017年10月19日・20日の2日間、香港で行われた Service Design Hong Kong 2017 に参加してきた。たまたまSNS経由で知って単独で申し込みをし、後にインフォバーン京都のエスベンさん、山岸さんも参加することを知った。つまり日本からの参加は3人であった。
思い切って参加してみて、得られた知識の量より体験の質が得難いものだったと感じている。いまだに振り返るたびに発見することが出てくるし、内容の捉えかたもじわじわ変化してきている。
もちろん異国の地で開催されていること、英語のみで行われていること、知り合いや日本人がほぼいない状況であったことなどの背景すべてが体験の質に影響している。自分の体験について振り返るとき、そのことを差し引く必要はないかなと思う。まるっと含めてよい体験だったし、経験として血肉になりそうだ。
カンファレンス中の一連の体験がとても印象深かったので、カンファレンスの概観を紹介するとともに、なぜそこまで強い印象を残したのかを自分なりに分析してみるつもり。おそらくとても長くなるので、この記事ではカンファレンス概観と感想をまとめ、別記事で参加体験についてをまとめようと思う。
カンファレンスのテーマと内容
テーマは「Designing Change」。組織における人間の限定合理性と意思決定過程の研究を行ったハーバード・サイモンが引用され、デザイナーは組織を変えることができるし、扇動者になることもできるという前提が置かれた。そのテーマに従って、1日目は「Change」にまつわるトーク、同じく2日目は丸1日のワークショップが用意されていた。
とても多くの参加者と交流したうえでの主観(たくさんの交流を促されたしかけについては、参加体験の記事で説明したい)では、スピーカーと参加者の双方に金融・銀行・保険などの会社に所属している/もしくは該当プロジェクトを担当している人が多かったように思う。
また、末端のプレイヤーよりもマネジメント層が多いように感じた。スキル獲得のための勉強という雰囲気ではなく、ビジネスとしての視座を交換しに来ている印象といったところ。しかしこれは個人的な感触なので、公式なデータと一致するかどうかはわからない。
セッションタイトル
ここでは各セッションのタイトルのみ箇条書きにしておく。今のところ、どのセッションもプレゼンテーションの公開は確認できていない。見つけることができたら随時リンクを足していけたらと思う。
スピーカーによるトーク
- Is Design Thinking Just Critical Thinking?
- Getting Real with Design Thinking
- Battling Disney - How local company Ocean Park fared against one of the world’s biggest brands
- Shiny Happy People - The Ovolo story of customer experience
- Technology and Inclusive Leadership
- Design-driven Fintech
- Storytelling for Designers
- A 22,000 Person Startup
パネルディスカッション
- Computer Says No - Why do many organisations find it hard to change?
- Best Practice is Past Practice
カンファレンスチャレンジ(アクティビティ)
- Active Data (無作為に選ばれた人たちが前に出て Yes/No クエスチョンのアンケートに答える)
- Creative Mix (ペアになって How Might We... 形式のお題に対してアイディアを考える)
パラレルワークショップ(4トラック)
- Track 1: Stirring Change
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- Tackling Tough Topics
- Breaking Down Barriers to Change
- Track 2: Scaling Change
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- Strategy through Action
- Connected Service Design
- Track 3: Sustaining Change (私はこのトラックに参加した)
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- Transformational Leadership
- Selling Service Design
- Track 4: Mojo Nomad Jam
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- Creating a Co-living Experience
特に気になったセッション
事例では Todd Hougland さんによる Ocean Park Hong Kong(香港海洋公園)のローカルな取り組みの話がわかりやすく、そこに地道な努力が欠かせないことも含めてユニークな内容だった。プロモーションビデオを見ていると、なんとなくひらかたパークを連想してしまうコミカルさもあるが、箱モノとしてだけの公園ではなく、カルチャーとしての公園でもあるのだという考え方がすてき。
Ocean Park Hong Kong’s Todd Hougland on “The World’s Best Summer Job というサイトでも事例について見ることができるので、興味のあるかたはそちらをどうぞ。
Technology and Inclusive Leadership というセッションでは、スピーカーの Maaike Steinebach さんのバックグラウンドや視点に惹かれた。危機は機会であるという話や、個別の価値から共同体としての価値へという話も共感できた。
Inclusive Leadership という概念は、私がカオスパイロットで学んだ Creative Leadership と共通する部分が多く、その周辺の要素についてもっと踏み込んで考えてみたくなった。
自分の英語力では理解面で大変に心もとないため、各プレゼンテーションの細かい説明は避ける。どうしても誤解や間違いがありそうだし、いろいろ考えを巡らせながら聞いているため、理解の中にかなりの自己解釈を含んでいるから。元資料が公開されるといいのだけれど。
気になったキーワード
テーマ通り「change」という単語はたくさん出た。その他たくさん出たように感じた/自分の中で引っかかった単語を挙げておくと「assumption」「perspective」「culture」「experience」「leadership」「attitude」などがある。
中でも、リーダシップに関わる言葉は複数出てきた。そしてそのバリエーションにとても興味を引かれた。私が覚えている限り、少なくとも「Transformational Leadership」「Inspirational Leadership」「Inclusive Leadership」の3つの表現が出てきたと思う。
調べてみると、「Transformational Leadership」は英語圏ではポピュラーな概念のようだ。「Inspirational Leadership」は最近の企業に必要なマネジメントスキルという文脈で言及しているサイトを見つけることができる。「Inclusive Leadership」についてもかなりたくさんのソースがある。それぞれのリーダーシップの意味については、また別の機会に整理してまとめてみたいところ。
また、フレーズとして一番記憶に残ったのは「Culture eats strategy for breakfast」。Design-driven Fintech のセッションで引用されたそのフレーズはピーター・ドラッカーのものだが、トークセッションの終盤で聞くと、より意味を持った言葉に聞こえた。企業文化は戦略に勝る。デザイナーが変化や変革をリードすることの意味は、きっとそこにあるのだろう。
全体を通しての体験がすばらしかった
冒頭でも述べたが、カンファレンス中の一連の体験がとても印象深かった。それこそジャーニーマップにして気持ちの動きやらタッチポイントやらをすべてお見せしたいほどに。
その点について次の記事にまとめるので、そちらも合わせてご覧ください。