蠍は留守です考

蠍の輪郭を見つめてふける思惟の痕跡

20170509013806

自分の専門性とファシリテーションのコンビネーションを整理する

この記事はファシリテーター Advent Calendar 2018 17日目のエントリーです。

今年は年のはじめにファシリテーション勉強会の講師をさせてもらったところからはじまり、ファシリテーションについて改めて考える機会の多い一年だった。一年の終わりに、少しだけセルフリフレクションをしたい。

私はサービスデザインやビジネス開発の文脈でファシリテーションに関わることが多いので、その領域でのファシリテーションにフォーカスした内容になっている(つまり領域が変われば見方も変わる)ということをご承知おきいただければと思う。

ファシリテーションスキルは二階建て

2015年に『私のファシリテーションへの向き合い方(2015年版)』という記事を書いたのだが、今でも概ね似たようなことを考えながらファシリテーションをしている。その後、仕事やコミュニティーを通じて「デザインワークショップにおいて、ファシリテーションはどうやったら訓練できるのですか?」と聞かれることが増え、2017年・2018年と専門性とファシリテーションのコンビネーションについてよく考えていた。

サービスデザインやビジネス開発の文脈でファシリテーションに関わることが多いということは先に述べたが、私はサービスデザイナーの専門性によるスキルとプロセスをファシリテーションする部分のスキルを分けて捉えている。ざっくり言うと下の図のようになる。

ファシリテーションが二階建てであることを表現した図

この図を描く前から「二階建て」という表現を多用していて、それをまとめてみたらこうなったという感じ。自分自身の理解として、一階二階を次のように定義している。

一階:一般的なファシリテーションスキル

  • 合意形成や相互理解をサポートし、協働を促進させるスキル
  • 専門性による二階部分が十分に機能する基礎的なスキル

二階:自分の専門性を活かしたファシリテーションスキル

  • 目的とゴールに対する的確なフォーカス
  • ゴールまでの道のりのバリエーション提示
  • 道案内の根拠を論理的に説明できる知識
  • 有用なフィードバックと方向付け

一般的なファシリテーションスキルだけでファシリテーションができる場や状況もあるし、そういう場に関わることもあるので、両方が必ず必要と言っているわけではない。ただ、今サービスデザイン系やビジネス開発系のワークショップで求められるファシリテーター像を考えるときに、デザイン文脈やビジネス文脈をまったく知らないファシリテーターがそれを担うということは考えづらい。

なぜサービスデザイナーである自分がファシリテーションをする必然性があるのか。なぜこの分野での協働を自分がファシリテーションする必要があるのか。そういった前提を踏まえていくと、ファシリテーションスキルを二階建てて考えることが自然に思えるのだ。

なぜ今自分がその場をファシリテーションするのか

そのことを考えたことをある人はたくさんいると思う。きっと誠実に向き合ってきた人ほど、たくさん考えてきた問いなのではないかな。私にとっての答えのひとつが、二階建て部分にある。もちろん、それがすべてではないけど。

問いの解像度コントロールは二階部分が担っている

2018年のはじめに講師を務めさせてもらったファシリテーション勉強会の資料にも、二階建ての図を使用している。以下がそのときのスライド資料。ちなみにこの勉強会の様子はurushi-noteさんの『ファシリテーション勉強会 WITH UX KANSAI』記事にあるので、よろしければそちらも合わせて。

この資料の中では、ファシリテーションデザインをするときに重要なこととして、以下のような点を挙げている。

1. 場に起こっていることを脳内あるいは心的風景の中で構造化する
2. 問いと構造化を通じて、今そこにあるバイアスを見つける
3. 場に存在するバイアスの最大公約数を見つける
4. 構造、バイアス、最大公約数を適切な形で場に返す

以上の流れに沿って問の解像度をコントロールすることで、自らのファシリテーションをデザインしていくことが必要、というのは前述の『私のファシリテーションへの向き合い方(2015年版)』でも書いている。そのときからの差分は、解像度のコントロールは専門性による二階部分の機能によってのみ適切に行われる、と考えている点だ。

なぜサービスデザイナーである自分がファシリテーションをする必然性があるのか。なぜこの分野での協働を自分がファシリテーションする必要があるのか。それはサービスデザイナーがサービスデザイン分野のファシリテーターとして適任だからである。

こう言うとめちゃくちゃ当たり前に聞こえてしまうのだけれど、でもそのことを意識しておくことは大事なのではないかと思う。ファシリテーターとして自分が持つ2つの専門性のコンビネーションをきちんと意識して、活かしていきたい。

この記事はファシリテーター Advent Calendar 2018 17日目のエントリーでした。

Copyright © Hitoyam.