蠍は留守です考

蠍の輪郭を見つめてふける思惟の痕跡

20170509013806

概念、言葉、ジェスチャー

先日、とあるワークで頭を抱えるほど難しいお題を出された。

「離島の秘祭情報を調べて集める」という内容を、言葉を使わずジェスチャーだけで表現せよ。

これには久しぶりにガツンとくる感じがあった。できない。ジェスチャーで表現、できなかった。ちなみに制限時間的には30秒くらい。無限に時間を使っていいわけではない。

難しいお題

どう表現するかを考えた

いったん「集める」はスキップして「調べる」を表現する。本をめくったりキーボードやマウスを使いながら画面を眺めるというジェスチャーをしたら、それはなんとか伝わった。

しかし、次は「離島」だ。これが難しい。まずは「島」を表現したいのだが、「島」を表すには「海」が要る。一生懸命に海を表そうとしたら、先ほどの「調べる」と結びついて「ネットサーフィン」だと思われてしまった。

「離島」のあまりの難しさに、先に「秘祭」を表現してみようかと思ったが、「秘祭」って、何を表現したらいいかわからない。そもそも「秘」だし!

なぜ難しいかを考えた

今回は特に「離島」と「秘祭」が抜きん出て難しいと思った。「島」を表現するだけでも難しいのに。

改めて意味を調べよう

大辞林によると、

離島:都道府県庁の所在する本土から海をへだてて隔絶している島。はなれじま。

島:四方を水で囲まれた比較的狭い陸地。海を隔てている本土より狭い陸地,また河や湖の中にある狭い陸地。

「秘祭」に至っては、そのものの単語は辞書に載っていないようだ。拾ってくれるのはamazonのスポンサードリンクぐらいである。「祭り」のみで調べると

祭り:神や祖先の霊をまつること。祭祀(さいし)。祭儀。特に,毎年きまった日に人々が神社に集まって行う神をまつる儀式と,それにともなって催される神楽(かぐら)などの諸行事をいう。祭礼。おまつり。

こんなことを考えてみて気付いたのは、「離島の秘祭情報を調べて集める」という文章は、文章としてはシンプルだけど、言葉としては複雑なのだということ。

「離島」も「秘祭」も、あるものをさらに修飾する形になっている言葉。「離島」の難しさは限定的な在りようを説明する難しさ、「秘祭」の難しさは概念を説明する難しさと概念を概念で修飾している難しさなのかなと思った。

UIを作る時も同じなのかもしれない

シンプルで直感的なUIがよいUIとよく言われるけど、それはこの話に通じる。複雑な概念をシンプルなジェスチャーに込めるのは難しい。だから、ジェスチャーで表現できるくらい目的が砕かれていれば、UIもシンプルにできるのではないか。

なんかUIが複雑になってしまうという時は、目の前にあることをジェスチャーで表現できるところまで砕けるかどうか試してみるといいのかも。今度機会があったらやってみよう。

だから私は言葉が好きだ

身体性が失われていると言われる昨今、言葉を捨てて身体を使うことを省みる大切さはわかっているつもり。でも、私は複雑な概念を編みあげることができる「言葉」の存在が好きだ。

今回たまたま難しいお題を出されて、普段何気なく使っている「言葉」がどれほどすごいものなのかを気付かされることとなった。たぶんそこがワークのねらいではなかったんだろうけど、副次的な気付き。

身体も頭も、どちらもたまには体操した方がいい。現代には、概念が多すぎる。

Copyright © Hitoyam.