この記事はこまどりさん主宰の Service Design Advent Calendar 2018 6日目のエントリーです。
2018年11月2日・3日の2日間、ベルリンで行われた Service Experience Camp 2018 に参加してきた。以前からずっと行きたかったイベントなので、念願が叶った形だ。
盛りだくさんの2日間+αをひとつの記事にまとめるのは大変だったので、短くまとめるのは早々にあきらめ、以下の3つの記事にわけてシェアしたいと思う。
- コ・カンファレンス概要(この記事)
- オープンセッションまとめ
- 特に印象に残ったこと
Service Experience Camp とは
Service Experience Camp をざっくり表現すると、サービスデザインに興味のある人・従事している人が能動的に参加する場。インスピレーション溢れる第一人者の話が聴けるだけでなく、アイディアやメソッドを自発的に持ち寄って参加者同士で体験できるコ・カンファレンスと言って差し支えないと思う。
It is a festival-like event with open sessions ranging from workshops to discussions and everything you want to make out of it.
Service Experience Camp 2018
2017年はおやすみだったため、前回の開催は2年前。Service Design Berlin の YouTubeチャンネルに2016年の動画がある。雰囲気についてはこちらが参考になるのではないかな。
Service Experience Camp のいちばんの特徴は、オープンセッションの内容が当日挙手制で決まることじゃないかなと思っている。やりたい人が自由に参加できる場が用意されていて、その熱気には特別なものがある。
2日間のアジェンダ
2018年の今回は「Crafting delight - delivering value」というテーマのもとに、2日間で7本のキートークと40本のパラレルオープンセッションが行われた。オープンセッション40本ってすごい! 以下の写真にあるように、セッションオーナーのプランが貼り出され、それを眺めながらどれに参加するか検討することができるのだけど、まず数が多くて圧倒されちゃう。
キートークやセッション以外に、朝食タイム、ランチタイム、コーヒーブレイクがたっぷりとあり、1日の終わりにはラップアップが行われる。1日の流れをそのまま書き出すとかなりの長さになってしまうので、ざっくり上記のような内容が2日間に詰まっていたよ、ということが伝われば十分かなって思う!
キートークの内容
2日間のあいだに行われたキートークは以下の7本。スライドが公開されているものにはリンクを張っているので、そちらをどうぞ。
- Creating the next-level of flight experience
Maria Lumiaho, Design Director of Finnair - Designing for future life events – insurance and pension services
Karolina Kohler, Lead Design Researcher of Kaiser X Labs - Data driven intuition and taking hunches seriously
Temi Adeniyi, Head of Design of Blinkist - Future-proof design for urban mobility in growing cities
Hanna Kops, Head of Experience of Transport for London - On designing healthcare from within
Frank Abralind, Experience Designer and Professor of Sibley Hospital - Reimagining fashion and designing at scale
Jay Kaufmann, Head of Product Design of Zalando - How making services accessible benefits all users
Alistair Duggin, Head of Accessibility of UK Government Digital Service
特に心に残ったのは、英国政府のHead of AccessibilityであるAlistair 氏のキートーク。サービスデザイン系のカンファレンスでは、必ずと言っていいほど英国政府のサービスデザイナーが登壇する。けれど、今回はHead of Accessibilityという立場の人が登壇したこと、そして彼がdelivering valueについて語る姿を見られたことが、純粋にうれしかった。同時にとってもうらやましかった。
価値は万人に届けられなくてはならないということ。アクセシビリティーに焦点を当てることでイノベーションが推進できるということ。インクルーシブであることが全体の利益にもなること。ひとつひとつは何度も耳にしたことがある話題だけれど、政府として実践している話を聞くことができるのは貴重だと感じる。
それぞれのキートークの後には、プレゼンターへの質問タイムが挟まれる。ボールのように投げることができるクッション型のマイクをパスしあいながら、たくさんの質問をプレゼンターにぶつける参加者たち。
パネルディスカッションは2日目に1本だけあった。それぞれ違う環境・領域でのデザインに取り組んでいるプレゼンターが交わすお話はエキサイティング。
特に興味深かったのは、delighting という言葉をどう捉えているかという話。実はちょっと前に、とあるデザインプロジェクトで「delight」という言葉の意味についてクライアントと議論したことがあって、そのときの話と重ねながら聞いた。
本当はもっと、デザインにまつわる言葉について真正面から話す機会が必要なのかもしれないな、と思っていたところなので、SXC2018でちょうどその話題が出たことにシンクロニシティを感じてしまった。
コ・カンファレンスに参加するうえで、参加を自分なりに何をどう意味付けるかというのは重要なファクターだと思っている。自分の仕事や今現在の関心事との接点をどのように見出し、自分の中に深く落としていくか。そういう瞬間がたくさん訪れるのも、コ・カンファレンスの魅力なのだと思う。
オープンセッションの内容
オープンセッションでは、メインホールから散り散りに各セッション用の部屋に分かれ、ワークショップやディスカッションを行った。人数はセッションによってまちまちだけれど、どのセッションにも興味を持つ人が集まり、発言するも耳を傾けるも自由な雰囲気の中、それぞれの関わり方で場に参加していた。
ここでは雰囲気がわかる写真を載せるのみとして、オープンセッションの詳細については、オープンセッションまとめ記事のほうで紹介している。そちらも合わせてお読みいただければうれしい。
会場全体の雰囲気
キートークを行うメインホールの他に、ランチやコーヒーブレイクのための場も充実していた。飲み物やスイーツ、フルーツなどがたっぷりと用意され、ランチタイムにはドイツらしい、しかし今の時代に合わせてアレンジされたメニューを味わうことができた。
しかし、なんということだろう! ランチの写真が残ってない! いつもなら何を置いてもニッコニコで撮るのに! 撮ってなかったこと自体が意外すぎて、自分でもびっくり!
…振り返ってみれば、その理由はただひとつ。SXC2018ではじめて出会った人たちや久しぶりに会う友人と、1分1秒を惜しんでおしゃべりしていたからだなぁってわかる。自己紹介や近況報告はもちろん、参加したセッションでどんな刺激を受けたか、何を理解したか、どう解釈したのか、話したいことや知りたいことが多すぎて、写真を撮ることさえ忘れていたんだよね。
そこに行けば必ず誰かがいて、話しかけたり交流したりすることができるオープンな場所がある一方で、ひとりで静かに休憩したいときに利用できる場所も、あちこちに残されていた。
母国語ではない言語、特に流暢に話せるわけでもない英語での思考やコミュニケーションを続けていると、とってもくたびれてしまう。そんなときに階段の踊り場に設置されたソファーや、セッション中の人のいないホールなど、ほっとできる場所でひといきつけるのはありがたかった。もちろん、おいしいコーヒーを片手にね。
交流のための夜のレセプションは、会場を別の場所に移して行われた。レセプションの間じゅう、壁のスクリーンに炎の映像が映されていて、くつろいでいるけれど少し高揚するような雰囲気が満ちていた。まさにキャンプみたいな居心地のよさ。
ここでは、参加したセッションのオーナーと夢中になって話し込んだりもした。一方的に相手からもらうものを受け取るだけではなく、こちらが感じたことや考えたことをメイクセンスな形で相手に伝える楽しさと難しさ。会場を後にしてからも、メッセンジャーで会話が続いたりして、お互いに意見を交換している実感を強く持つことができた。
そんなふうに楽しむことができたのは、SXC2018や参加者のオープンマインドな在りかたのおかげ。その在りかたに惹かれて、Service Experience Camp に賛同する人が多いのだと思う。
オーガナイザー5人がとってもチャーミング
Service Experience Camp のオーガナイザーは、Katrin、Manuel、Martin、Mauro、Olga の5人。それに加えて、たくさんのボランティアやスポンサーで成り立っている。オーガナイザーの5人が醸し出すムードが柱となって、Service Experience Camp のオープンネスを支えていると言って間違いない。
残念ながら、これまでのような規模で Service Experience Camp を行うのは、今年が最後なのだという。これだけの会を運営する労力や情熱は大変なものだと思うし、しかたのないことかもしれない。
けれど、惜しむ声はたくさんたくさん上がっている。惜しむなら、自分たちでやってしまえばいいんだろうな。Service Experience Camp のマインドやスピリッツを身体の中に灯しながら、日本でもセッションを持ち寄る形のコ・カンファレンスができたらいいな。大きな規模でなくてもいいから、ね。
そんな思いを胸に秘めつつ、明日はオープンセッションまとめの記事を書く予定です!
この記事はこまどりさん主宰の Service Design Advent Calendar 2018 6日目のエントリーでした。