蠍は留守です考

蠍の輪郭を見つめてふける思惟の痕跡

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自治体Webサイト・ユーザビリティ評価2009 最終審査発表会

昨年12月に開催された自治体Webサイトユーザビリティワークショップを元に、今年の1月〜5月ぐらいにかけて「自治体Webサイト・ユーザビリティ評価2009」が実施された。

ユーザビリティの面からより専門的に、そしてより利用者目線で評価した、他には無いサイト評価とのことで、今回は子育てと引越しについての評価が行われた。私もヒューリスティック評価及びペルソナによる評価に参加した。

先日その最終審査発表会があり、行ってきた。会場は東京国際フォーラム。

自治体サイトユーザビリティ評価 結果発表

基調講演「開かれた電子政府実現に向けて 〜電子政府対応推進WGの検証〜」

オンライン利用率はそれほど高くないし、1件も利用されなかった電子申請もあるとのこと。高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の「新たな情報通信技術戦略」では、キオスク端末を多くの場所に置いたり、国民ID制度を導入したりすることによって、国民本位の電子行政の実現を目指すそうだ。地域の絆の再生というキーワードなども出た。

日本の電子行政の現状と今後についてのお話だったが、全体を通して今ひとつ具体的に何ができるのか分からない感じのお話だった。絵にかいた餅という印象が否めなかったので、今後の展開が気になる。

結果発表とワークショップ参加者への資格認定証授与式

総合1位は兵庫県姫路市、引越部門1位は大阪府大阪市、子育て部門1位は千葉県習志野市という結果だった。納得感のある結果だったが、それぞれ部門や評価法が変わると結果もガラリと変わるので、その点は頭に置いておかないといけない。

最後にワークショップ参加者への資格認定証授与式ということで、立派な枠に収まった認定証をいただいた。

認定証

ASEAN行政サイトユーザビリティ評価 結果発表

普段自治体サイトを多く見ているが、ASEANを含む世界の行政サイトはあまり見る機会がなかったので、目を向けるよい機会になった。

特別講演「アジアの事例に見る自治体ポータルのトレンド」

マイクロソフトの今井早苗さんの講演では、マイクロソフトの汎用製品やクラウドサービスの有効活用などのお話があった。

自治体の抱える課題は世界共通なので、世界共通の課題へのソリューションをテンプレートとして提供しているとのこと。キーワードとして以下のような言葉が挙げられた。

  • Citizen Centric : 組織の壁を感じさせない
  • Integrated : 庁内システムとの有機的な連携
  • Transparency : わかりやすい「見える化」
  • Intaractive : Gov 2.0
  • Participarion : 政策決定プロセスへの参画

ASEAN行政サイトユーザビリティ評価 総合1位 シンガポール

ASEANの行政サイトで総合1位だったのはシンガポール。国連電子政府ランキングでは11位のサイト。デザイン、内容、両面で評価が高く、総合的に優秀なサイトとのことだった。

  • ヒューリスティック項目では長所と短所が明確に分かれた
  • メニューの分類、更新頻度、サイト内検索、サイトマップなど、ユーザを補助する項目において高評価
  • 文字サイズの変更機能、イラストを用いたメニューやアイコン等の視覚的表現に課題
  • 国家サイトの中では圧倒的第一位
  • ペルソナ評価においても高い評価
  • 観光用の特設サイトが作られており、観光名所や食事など情報量が豊富
  • 多くの言語に対応している
  • 就活についてもコンテンツの量、質ともに充実している

ASEAN行政サイトユーザビリティ評価 都市サイト1位 クアラルンプール

ASEANの行政サイトで都市サイト部門1位だったのは、マレーシアの首都クアラルンプール。国連電子政府ランキングでは32位で、ASEANの中ではシンガポールに続く上位サイトだ。

  • 色彩の統一性や、各要素の配置が洗練されており、ユーザに配慮した設計
  • ASEANサイトでは唯一文字サイズや背景色をが変更可能
  • 情報の分類や、スクロール、リンクの階層など使いやすさの面でも高評価
  • 注目情報の位置や連絡先の位置、コンテンツの内容など分かりやすさの面に課題が残る
  • 観光ペルソナ面では観光スポットの情報がいくつか用意されているので、初心者にも分かりやすい
  • 就活ペルソナでは、ややコンテンツ不足気味
  • ライセンス取得支援情報や政府に関する仕事の情報はあるものの、雇用状況等の情報はない

全体を通しての感想など

自治体ランキングを実施している法人・団体は他にもたくさんあるが、評価方法や具体的な項目がクリアになっていないものが多く、納得できるようなできないようなモヤモヤした気分で順位だけ眺める、といったことも一部あるように思う。

今回の評価に関しても、専門家による最終審査の項目や手法に関してどのように行われたのか、よく分からない部分もある。資料としてガイドラインの一部を見ることはできるが、転載禁止項目になっているので紹介はできない。

実際よくよく考えてみると、評価(の一部)に市民が参加しているという事実から、全てがオープンにされているような錯覚を起こしてしまうことがないとは限らない。思い込んでしまうと思考停止してしまうし、気付かず走ってしまう可能性だってあるので、怖い部分がある。

今後も何かに対して点数を付ける作業をする機会があるかもしれないが、思い込みや思考停止に陥らないよう気を付けたい。何が明らかで何が明らかでないのか、きちんと考えることを忘れないで取り組む・受け止める、という姿勢を忘れずにいたいと思う。


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