iPadから学ぶIAについてということで、WDE-ex Vol11『iPad のウェブデザイン:私たちがみつけたこと』に行ってきた。
スピーカーは Information Architects の Oliver Reichenstein 氏。相変わらずの人気っぷり。iPadのデザインとiPadアプリ(ライティングマシーン)のデモを中心に、質問時間を多く取った構成。
ざっくりメモなど
iPadは雑誌でも新聞でもない
デバイスとしてのiPadは、本でもないしウェブ上のデザインともまた違うので、元々あるウェブのデザインをただ小さくするだけでは不十分。iPadのデザインは粗いものであること、メタファーを使うとしたらファンクションが必要であることなどを理解して、適切なデザインを心がけなくてはならないとのことだった。
- ひとつの機能に絞ってシンプルに正しく作ること
- コントラストを常に考え、大きくすることを心がける
- PCのモニターを信じず、実機とライブビューを使うこと
特性を考えるとアプリはシンプルであるべきで、余計な機能を付けないことが肝になりそう。削ぎ落として残った本質がアプリの価値となるので、「削る」という作業が一番しんどい。何でも盛り込む方が頭を使わなくて済んでしまうから。
ウェブデザイン、ウェブ制作との違い
iPadアプリを作る際にも、ウェブ制作の時と同じようなワークフローで制作しているそうだが、それが正解であるかどうかはまだ分からないとおっしゃっていた。また、ルールが手探りなので、ウェブのデザインよりも工数はかかっているそうだ。
技術面では、一番大切なファクターは速度であり、JavaScriptなどのウェブ系の言語よりもネイティブである Objective-C の方が速い。ただし作りやすさの面ではHTMLの方が圧倒的に優れているので、いきなりXcodeで書くのではなくHTMLから始めてみるのもいいとのこと。
iPadでの最適フォントサイズは20〜24pxぐらいではないかとの見解。しかしそのようにして美しさと可読性を確保しようとすると、もともとスペースが小さい上に文字が大きくなる。画面に表示できる内容が限られてしまうため、3カラムなどのデザインは適していないことになる。不要な要素はできるだけ削り、最適なデザインを実現しようとのことだった。
もしも、はじめてウェブアプリを作るなら
まだウェブアプリを作ったことがなくて、今から作ってみたいと考えているなら、iPadからはじめることをおすすめされていた。
- 機能をシンプルにする必要があるので足し算ができない
- コンテンツによりフォーカスできる
などがメリットとなり、洗練されたアプリが作れる、ということのようだ。確かにシンプルなものを打ち出すプラクティスになりそう。アイディアを膨らませた後の引き算はとても難しい。
ライティングマシーンのデモ
そのような考えの上で制作されているライティングマシーンも、書くことに特化したシンプルなアプリ。少ない行数だけをハイライト表示することで、集中力を高める役に立つそうだ。
懇親会の時に実際に触っている様子を見せていただいたが、フォーカスモードではかなりしっかりフォーカスが効いていた。デフォルトのiPadキーボードにはない矢印キーも追加され、リリースまでにはさらなる機能が付くようだ。
とにかく、シンプルに
「ユーザは使いやすいアプリに良い印象を持つ」ので、まずはコンセプトとそれに対する使いやすさを追求すべき。使いやすいアプリは見た目がよくなかったり、キレイなアプリは使いづらかったりという現状がまだまだあるようだが、これから多くのアプリが制作されるにあたって、素敵なアプリが増えるといい。
まだiPadアプリを作ったことがないのだが、機会を見つけてチャレンジしてみたい。